2022/09/21
禾乃登(こくものすなわちみのる)夕暮れに
さあ、最後はMSE10連のさがみ75号。この日最後の光を受けてのギラリを期待します。空に浮かぶ雲も徐々に朱に染まり始める中、露払いとしてやってきたのは1000系。夕日を反射してほんのり赤く染まる姿に胸が高鳴ります。
2022年9月10日 小田急線 開成-栢山
振り返れば富士山付近が日没ポイントになりそうですが、生憎そこにはドンと雲が。そして無情にもその雲に今朝からお世話になった太陽が吸い込まれていったのは、通過数分前のことでした。惰性でシャッターを切って「まあしゃあないねえ」とぼやきつつカメラを片付け三脚をたたみはじめます。その時、かの大巨匠のお言葉が脳裏に浮かびました。「人が三脚をたたんでからの時間が・・・」。
太陽は沈んだもののまだ明るい時間。富士はシルエット。その富士のそばには刻々と黄金色から茜色に変わっていく雲が。こいつを今日最後の題材にいただきましょう。
急ぎ踏切を渡って立ち位置を探します。望遠で富士と一緒に車両の先頭を切り取る感じでと頭の中でイメージを組み上げますが、あたりが闇につつまれるまでの時間はわずか。直感の露出とカメラの性能と今朝の厄落しを信じでシャッターを押し込みます。
2022年9月10日 小田急線 開成-栢山
やがて残照に輝く雲も闇に溶け込み、夜のしじまがゆっくりとあたりを包み込みはじめます。同時にどっと疲労感が。か細い虫の声の中、とぼとぼと農道を歩き踏切を渡りふと振り返るとそこには曽我丘陵から姿を現した中秋の名月が。
夜とともに山の端いづる月影のこよひ見そむる心地こそすれ(清輔集)